TOPページ原子力問題研究グループ > 放射線への被ばくによる健康影響の見方・とらえ方・考え方

原子力問題研究グループ

2011年04月14日 up New !

放射線への被ばくによる健康影響の見方・とらえ方・考え方

 高木学校では、日本における被ばくで最も多くを占め、世界の中でも突出している医療被ばくに対し、その低減策として『医療被ばく記録手帳』の活用と被ばくによる健康影響についての知識を広める活動を行ってきました。
 2011年3月11日の地震・津波と同時に発生した福島第一原発事故によって、日本の被ばくは新たな様相を見せています。すでに高木学校では被ばく最小化のための情報発信や被害者支援の活動を始めています。

 この機会に被ばくによる健康影響の見方・とらえ方・考え方として最も大事な点を以下のようにまとめました。


1.急性障害と晩発性障害

 放射線被ばくによる健康影響には急性障害と晩発性障害があります。急性障害は、100ミリシーベルト程度以上の放射線をいちどに被ばくすることによって組織の反応として現れ、線量が多くなると死に至ります。
 晩発性障害は、何年も何十年も後に被ばくの累積線量に応じた発生頻度で、典型的にはがんのような疾患として現れます。


2.放射線は累積線量に応じた影響がある

 がんは細胞における遺伝子の変異の積み重ねによって発生します。放射線はDNAの二本鎖を密度高く損傷し、細胞分裂に伴う遺伝子の修復間違いによる変異を累積線量に比例して増やします。変異が蓄積する結果、累積線量に比例して人間集団における発がんを増やします。
 広島・長崎の原爆被ばく生存者の長期にわたる調査をはじめとする疫学研究で、これ以下ならば発がんがないとする線量はないとされています。


3.少なくとも1ミリシーベルトを超えないこと

 1ミリシーベルトの放射線は1個の細胞の核に平均して1本の放射線が通ることに相当し、国際放射線防護委員会(ICRP)によれば、集団における頻度としては1万人に1人の発がんにつながります。発がん頻度はもっと高いとする研究やモデルもあります。しかし、最低限これくらいはあるものとします。
 したがって、少なくとも一般公衆の線量限度1ミリシーベルトを維持するのが重要です。自然放射線以外の被ばくについては、医療においてもエネルギー利用においても正当な必然性があること、必要最小限の被ばく線量とすることが条件です。


 上記のように放射線への被ばくによる健康影響とらえると、放射線防護のためには、若い人を優先としたヨウ素剤の服用、避難・移住、飲食物の制限等が必要になります。これは、健康、生命のみならず生活、環境、文化の破壊をもたらし、究極的には防護は不可能です。
 今度の事故で桁違いに大量の放射能を生み出す原子炉の制御がいかに困難であるかが明白となりました。一方で、エネルギー消費と社会構造を転換するのは、その気になれば、さほど困難ではありません。
 したがって、原子力発電には正当な必然性がないという結論に至ります。みなさんで原発はいらない、意思表示をしましょう。

▲このページの先頭に戻る
TOPページ原子力問題研究グループ > 放射線への被ばくによる健康影響の見方・とらえ方・考え方