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高木学校通信 第68号(2010年5月28日 発行)

<目次>


中央医療技術専門学校で講義して

崎山比早子

 中央医療技術専門学校は京成立石駅から徒歩10分足らずのところにあります。昼間部は3年制、夜間部は4年制となっており、卒業生の大部分は診療放射線技師の職に就かれます。クラスあたりの生徒数は年度によって異なり30数人から40人位のようです。私が90分一コマの授業を二コマ受け持ったのは昨年からで、その前年は一コマでした。

 2年間の基礎教育を終わり、5月から3ヶ月間の実習に入る前の二クラスをまとめて一緒に授業することになっています。「放射線のリスク」について医療被ばくを中心に、これから放射線技師として働く方にお話しするよい機会です。従来のように、授業の前に『受ける?受けない?エックス線 CT検査』と「市民版医療被ばく記録手帳」を配布し、これらの内容について、現場にでた時に患者さんに質問される可能性があることを話しました。

 写真(※通信68号表紙)でもおわかりのように、市民講座とは年齢層がかなり違って20歳前後の方が大部分です。生物学の講義も受けて間もないために遺伝子の話をするのには苦労しません。しかし、授業をしていつも残念に感じるのは、大変熱心に聴いてはいるのですが、質問がほとんどでない事です。それで今年は講義を始める前に簡単なクイズをして、挙手の数を学生さんに数えていただきました。これはいきなり講義するよりも、双方向のやり取りができ、また彼等がどの程度の知識を持っているのかを知ることもできるため、有効な方法だと思いました。「医療被ばくという言葉を聞いたことがない」「職業被ばくには限度が決められており、医療被ばくにはない」ということ、「職業被ばくの限度線量」を知らない人はさすがゼロでした。また放射線障害で標的になるのがDNAであることを全員が知っているのも、世代が若いだけに高木学校の市民講座とは違うところでしょうか。ただ、「放射線に安全量が存在する」「放射線障害のリスクは蓄積しない、すなわち線量を加算する必要が無い」と答えた人がそれぞれ20%と32%であったのは教育のためだったのでしょうか。

 講義の内容で他のことは忘れても良いからこれだけは覚えておいて欲しい二点は、「放射線に安全量は存在しない」と「リスクは蓄積する」なので、それが理解できるように分子生物学的な説明に力を入れました。初めのクイズの効あってか、質問がたくさんあり、授業が終わってからも聞きにきた学生さんもいて、帰りの電車では、何とはなしに胸弾む思いでした。



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