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高木学校通信 第87号(2013年8月1日 発行)

<目次>


シンポジウム The Medical and Ecological Consequences of the Fukushima Nuclear Accident
「福島原発事故が健康、環境にもたらした影響」で発表して

崎山比早子

 福島原発事故から2 年目の2013年3月11日と12日、ヘレン・カルディコット財団とPhysicians for Social Responsibility(PSR、社会的責任を果たすための医師団) の共催で表題のシンポジウムがニューヨーク医学アカデミーで行われました。昨年12 月にカルディコット博士から、このシンポジウムで「低線量放射線のリスク評価」などについて話をしないかという打診を受けました。彼女は40 年以上にもわたり核兵器廃絶運動をしてこられた方であり、PSR は1985年に核戦争防止国際医師会議(IPPNW)と共にノーベル平和賞を受賞しています。国会事故調で明らかにしたことを海外の人に知らせることも責任の一つと考え、引き受けることにしたのですが、英語での発表は長い間、していませんでしたからひどく緊張し、準備をするのが大変でした。

 セントラルパーク前にある会場に着いてまず驚いたことは、日本からのユーストリームやIWJなどで放映されている映像をご覧になっているかたが沢山参加していたことでした。多くは女性で、活発に日本と米国を行き来しながら脱原発運動をして居られる方が多く、心強い限りでした。

 冒頭に管直人元首相と小出裕章さんのビデオメッセージがそれぞれ15分ずつあり、日本にもたびたび来ているA・ガンダーセン氏「彼等は何を何時知ったのか」、次いでD・ロックバウ氏「もう一つの予想できた驚き」の講演後私は「日本における低線量放射線のリスク評価−国会事故調で明らかになったこと」を、元国連職員の村松昭雄氏が「世界は福島事故から何を学んだのか」をそれぞれ30分間で講演しました。
 詳しくはウエブページ(http://www.totalwebcasting.com/view/?id=hcf#)でご覧になって頂ければと思います。各セッションの間に質疑応答の時間が約1時間づつあり、議論の時間的余裕があって、日本のシンポジウムとの違いを感じました。

 特に関心が持たれたのは、先日岩波書店から翻訳・発行された『調査報告チェルノブイリ被害の全貌』の著者のヤブロコフ博士の発表で、拍手が鳴り止まない程でした。また同報告書の中に収録されているツバメの白斑の写真でよく知られているMousseau T. 博士の報告も重要です。チェルノブイリと福島の汚染地区に住む鳥類や小動物に対する放射線影響で、線量が高くなると個体数が減少する、形態異状や腫瘍が増える等、人間では観察されにくい現象を明らかにすることによって人間への影響を類推することができます。これら野生動物や植物の変化は将来人間に起こりうる障害への警鐘でもあります。

 広島・長崎の調査報告では観察されないとされている遺伝的影響についての発表はウラジミール・ベルデッキー博士によってなされました。チェルノブイリ事故後のレウネのポリーシャ地区での先天性奇形を調べています。これはフクシマボイスというウエブを作っている平山百合さんがテープおこしして下記に翻訳されていますので、参考にして下さい。

FukushimaVoiceフクシマボイス: ウラジミール・ヴェルテレッキー 第3部 「リウネのポリーシャにおける先天性奇形とチェルノブイリ事故」(講演資料 抜粋和訳)

 まだ沢山の発表がありますが紙面の関係で報告しきれません。ご関心のある方は是非ウエッブをご覧下さい。

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今回の邦訳書とヤブロコフ博士講演会の意味

崎山比早子

 ロシアのアレクセイ・ヤブロコフさんとベラルーシのネステレンコ親子らによる『調査報告 チェルノブイリ被害の全貌』邦訳書が岩波書店から刊行されました。5月18日に刊行記念として星陵会館でヤブロコフさんによる講演会が開かれました。講演に先立って、司会のおしどりマコさん、翻訳プロジェクトのチーム代表星川淳さんの挨拶に続き、崎山さんが「解説」として演説をしましたので、全文を掲載します。(編集担当)

 まず、はじめにこの『調査報告書 チェルノブイリ被害の全貌』をお書きになったヤブロコフ博士と共著者、この本を翻訳なさった星川さんはじめ「チェルノブイリ被害実態レポート翻訳チーム」の皆さまにお礼を申しあげます。本当に大変なお仕事であったと思います。

 福島原発事故から2年以上が過ぎました。事故が起きた当時、毎日テレビで原子炉建屋の破壊状況を見ていた時、2 年後の生活があるなどとはとても想像できませんでした。事故現場で被ばくをしながら懸命に働いておられる労働者の皆さんのおかげで、幸いにも私達の今日があるのだと思います。しかし、いま、福島から離れた都会、あるいは福島の中ですら事故当初のあの衝撃は徐々に薄れてきて、放射線に対する注意を忘れかけています。この時期にこの報告書が刊行された意味は大きいと思います。

 この報告書には、今、日本に於いて沢山の方が放射線のリスクを考え、これから、自分たちの生活をどうするのか、判断する基礎になる情報があります。特に注目されるのはこれまで国際原子力機関(IAEA)、国際放射線防護委員会(ICRP)、WHO などの国際機関で否定され続けてきた放射線による非がん性疾患の発症を豊富な資料に基づいて紹介していることです。これまで西側でほとんど読まれることのなかったロシア、ベラルーシ、ウクライナ国内で発表された論文に加え、ドイツ、スエーデン、トルコ等チェルノブイリ事故によって放射能汚染を受けた国々からの報告も入っています。また、放射線の人体影響だけでは無く、チェルノブイリ地方における野菜や果物の汚染の程度、汚染食物を取り込んでしまった場合の対処の仕方など実生活に役立つ情報、環境汚染による野生の動植物への影響も網羅しています。そういう意味でこれは大変貴重で、私達の実生活に役立てたい報告書です。

 福島原発事故以来、日本では低線量放射線のリスクに関してこれまで決められていた公衆の年間被ばく限度線量の1mSvが20mSvに見直されてしまいました。事故があったからといって人の放射線に対する感受性が1/20に変わったわけではありません。
 1mSvという限度線量自体、安全量ではありません。それは、理論的にも、基礎実験でも、広島・長崎原爆被爆者をはじめとする疫学調査でも、放射線に安全量はないということは明らかに証明されているからです。
 1mSvと決めたのは、原発を運転し電気を売るためのコストとリスクを計りにかけて、これ以下に線量限度を下げると採算がとれなくなるという事情からです。そのことは原子力産業の影響下にあるといわれているICRP の委員長である、ゴンザレスさんですら、昨年福島のシンポジウムでおっしゃっていたことです。

 1mSv自体が安全量ではなく、経済的、政治的な要因で決まっているのに、日本の放射線専門家が、100mSvまではリスクがあるという証拠は無いと、いかにも科学的であるかのように主張しているのはおかしなことです。しかも見る気にさえなれば100mSv以下でも統計的に有意に白血病、脳腫瘍などのがんが増えるという論文はあるのです。
 放射線リスクにしきい値がないということは水爆の父と言われたアンドレイ・サハロフ博士が1958 年に発表した本のタイトルにすでに書いてあります。

 自然科学というのは新しい事実が発見されるとその発見をベースにして前にどんどん進んで行くというのが普通です。しかし、放射線のリスクに関してはいくら科学が進んでもそれが取り入れられず、わかっていることもわからないことにされ、いつまで経っても同じ議論をむし返しています。これは明らかに問題が科学からはずれて、経済的、政治的な領域に入っているのに、相変わらず科学であるかのような装いのもとに論争しているからだと思います。放射線による非がん性の疾患がないことにされ、チェルノブイリ事故による脳神経系の疾患に対しては「放射線恐怖症」という診断名が発明されたのも同じような事情によると思います。

 放射線の障害は基本的に放射線が体内を透過したときにできる反応性の高いフリーラディカルを介して作用します。がんの原因になるのも多くはこのフリーラディカルがDNAを傷つけるからです。このフリーラディカルがどのように細胞の中の色々な分子を傷つけ、この報告書に出てくるようなあらゆる病気を引き起こし、老化を促進するのか、これから研究が必要です。

 しかし、病気に対して最も効果的なのは予防であり、予防は被ばくをしないことです。そのために政府は住民を汚染地域から避難させる義務がありますし、これ以上汚染が拡がらないように国家的なプロジェクトとして1 日も早く事故現場を安定化させることが急務です。政府をその様に動かして行くのは市民の力であり、その力のベースになるのは科学的に正確な知識に基づく判断です。
 その様な意味で今日ヤブロコフ博士のお話を伺う事ができるのは大変有益で幸運だと思いますので、よろしくお願い致します。

 どうもありがとうございました。

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〈出前講演参加者の感想文〉
もう大丈夫?食品の放射能汚染と内部被ばくによる健康被害

2013年7月14日(日) 麻生市民館 第1会議室
主催:神奈川ネットワーク運動・あさお
「体内における放射性セシウムとカリウム」

 原発事故に関して、世の中の関心が薄れているのではないかという主催者の心配をよそに、猛暑と豪雨の中、30人以上の方が参加してくださいました。感想文を書いてくださった堀江さんは、4歳のお子さんのお父さんです。食品の放射能汚染についてたいへん心配なさりながらも、希望を持って生活を楽しんでいらっしゃるようすが印象的でした。(奥村晶子)

 2011年に起こった福島第一原発爆発事故からすでに2 年を経過しました。マスメディアによる放射能汚染問題に関しての情報は相変わらず非常に少なく、私自身も不安を抱えながら公的機関や民間測定所から発信される測定結果を参考にしながら食材選びに苦心しております。このような状況の中、今回は神奈川ネットワーク運動・あさお主催の講演会「もう大丈夫?食品の放射能汚染」に参加してきました。高木学校の奥村晶子さんを講師にお迎えして、放射線被ばくの危険性と現在における食品の放射能汚染の最新情報をお話いただきました。

 まず驚いたのが、参加者の数の多さでした。私の実生活の中では家族や親しい知人関係を除いて放射能問題が話題になることはほぼ皆無でしたので、危機意識をもった人たちがこれだけいるのだということに非常に力づけられました。私が講演会や勉強会に参加することで成果があったと感じるのは、専門家などの知見や最新情報を得るとともに、参加者同士の情報交換を行えるということです。とくに放射能問題は日常生活と密接に関係している問題であり、情報の共有が最も大切であるからです。講師のお話の中では新たな知識を得ることが出来ましたし、質疑応答の中では自分とは違った視点を見つけることが出来ました。LNT仮説を用いて、長期摂取によるセシウムの体内残留濃度を数値やグラフに表すことで、低線量被ばくであっても慢性化することによる危険性がよく理解できました。また、セシウムとカリウムが科学的に近い物質であることは知っていましたが、原子の大きさがセシウムの方が大きく、細胞内に取り込まれた場合に排出されづらいという話は非常に勉強になりました。質疑応答の中では、食材選びの基準をどのように考えたら良いのかという質問が多く見受けられました。産地で選ぶべきであるという意見や、食材の宅配業者が自主検査で安全を確認しているものが良いというような意見がありました。最終的には個人個人が自分の判断で決めることではありますが、他者の考えや意見を聞くことで自分が判断する上での参考になると思いました。

 放射能汚染問題はこれからも深刻化していくと思われます。政府や公的機関の情報をすべて疑おうとは思いませんが、正しい情報が入手しにくいこの状況にあって消費者のリテラシーを高めるためにも、放射能問題に関する講演会や勉強会に参加することは意味のあることだと思います。(堀江庸則)


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<七夕の夜に崎山比早子さんの講演会>
低線量被ばくの健康リスク −国会事故調が明らかにしたこと−

谷口恭子(被爆68周年8・6ヒロシマ大行動実行委員会)

 広島は何回か行きましたが、講演会は初めてで、参加者の中には被ばく者も居られ、講演にも自然と熱が入りました。広島大学の学生さんも数人参加して居られ、質問の時間に広島大学では学生自治会が復活したこと、神谷氏が副学長であり、低線量放射線はリスクがないと教えられていると話してくれました。以下に参加者の感想文をご紹介致します。


■ おれのじいさんは8/6、8/7、8/8 と入市した。親せきを探した。みつからなかった。おれのじいさんも、ばあさんも汽車で運ばれてくる被爆者を向原で介護し、焼いた!それは1日、2日、3日じゃない。風呂にもいれた。二人とも16年、17年後に死んだ。これは殺されたのだ。これが放射能だ!それ故、我はヒロシマの人間としてNO!だ!原発を必要とするのは我じゃない。原発以前にかえれ。60ワットの電球の下で、それでいいのだ。原発NO!を叫ぶことは資本国家権力の否定だ。人民、百姓、自治革命だ!我は小さい百姓。それを叫ぶ。

■ 専門的な方がこれだけ原発の危険性を訴えているのに、政治家がすきにしていることに、怒り、あきれています。高木さんは昔から、事故のまえから、反対されていたことを思いだします。私も、広島の人たちの苦しさを見つめて、できることを考えてゆきたいです。最近の状況は学者や科学者の意見を無視しているのかと考えていたけど、実は悪質な学者や科学者が巾をきかせているということですね!!市民の立場から考えて発言されている崎山さんに感謝です!!

■ 小・中学生が教科書で「原子力は安全」と教えられていた事が、事故直後にそれらを載せた教科書が回収されたと初めて知りました。文科省も「安全など欠片もない」とわかっていて、政府の言いなりになっていたのだというのは明らかです。危険性を理解していながら何も手を打たず、利潤のみを追及する。新自由主義・資本主義の在り様そのものだと思います。

■ 原医研の先生から、内部被曝をサイエンスとしてやるのは難しいと言われました。実際のところはどうなのでしょうか? 原爆被爆者の線量調査の対象に近郊の人たちが使われているのは内部被曝の影響を考えないことになっているのではないでしょうか。(放射線リスクはもっと高いかも知れないと考える必要があるのでは)

■ ウクライナやベラルーシに比べ、日本の保養や収束作業者への取組み、トリチウムへの無策を聞いて、腹立たしくてたまりませんでした。崎山さんのおっしゃるとおり、安心・安全と言って原発政策を進めてきた人(政治家・企業・裁判所・政党・科学者・芸能人・マスコミ…)たちがきっちり責任をとるべき。とらせないといけない。責任をとれないなら、まずは原発輸出するな、再稼働するな、労働者に権力よこせ! 質疑応答のときの崎山さんの応答に、崎山さんの怒り、思いがしっかり入っていてよかったです。 講演のパワーポイント?のコピーがほしいです。

■ 都内から妊娠を機に広島に移住した者です。自身も周囲も、3・11以降特に不調もなくくらしていましたが、情報を知るにつれ、後々自分の避難が無駄になってもかまわないので移住を決めました。自分が負った移住の負担と変化のない(ように見える)東京を考えると移住は正しかったのかと疑問に思うこともありましたが、今日のお話を伺って少しでも西に来て良かったと思いました。(娘だったので尚更です)。安全な被曝量などないという事があらためて分かりました。今後も色々な場所でお話を続けられて下さい。ありがとうございました。資料が紙媒体で頂けたら尚嬉しいです。パワーポイントのページのいくつかを写メにとりたくなりました。

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崎山先生の講演会の感想

伊藤亜希(石巻・子どもの健康と未来を守る会)

 私たちが暮らす石巻市は、3・11の大震災で甚大な被害を受け、最大の犠牲者を出した街です。街の広い範囲が大津波に襲われた後、何日かは水、食料の確保、身内の安否確認に追われ、やっとラジオが手に入ってからは、福島第一原発の事故より、津波や地震の被害、犠牲者の情報収集に一生懸命でした。ある程度生活が落ち着き、ニュースを観る余裕ができ、パソコンが使える状況になって初めて原発の事故に関心がいく様になりました。それから『放射能?内部被曝?外部被曝?シーベルト、ベクレル?』と勉強することとなりました。女川原発が立地する石巻に住むものの、今まであまりに関心が低かったことを反省しながら、子どもを守るために何ができるか、放射線、原発、環境、食育、医療被ばくなどあらゆる事を勉強しています。その様な中、4月28日の『さようなら原発in 石巻』で崎山先生の講演が聞けると知り、会のメンバー皆で心待ちにしておりました。

 講演では、日本の医療被ばくは世界一、病気を見つける為のCT 検査で癌になるリスクがある、放射線の危険性は蓄積する、など具体的な数字をもっての内容に衝撃を受けながらも、どんな低線量でも避けるに越したことはないと、今までより更に身が引き締まる思いでお聞きしました。感受性が高い子どもは口に入る物は勿論、X線やCT検査など医療被ばくについても親としてしっかり管理しなければならないと強く感じました。私達が医療被ばく記録手帳を持ち身近な病院に提示することで関心を訴えることができます。脱原発に関してもまず声をあげることから始められます。小さな一歩ですがすべては子どもたちの笑顔のためです。この思いが私達の活動の原動力です。最後になりましたが原発事故で未だ不便を強いられている方々に一日も早く笑顔が戻る事を願ってやみません。

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2013年度「夏の学校」予告・案内

瀬川嘉之 + 山田千絵

 8月24日(土)、25日(日)の2日間、毎年恒例の「夏の学校」を開校します。今年は東京都の西部、日の出町にある市民放射能監視センター・ちくりん舎と廃棄物処分場の見学を行った後、八王子セミナーハウスに宿泊して、翌日はグループ発表・個人発表と市民講座に向けての検討を行います。 概要、プログラムを掲載しますので、参加ご希望の方は8月10日までにお名前とご連絡先(住所、電話、メールアドレス、保険のため年齢)をメールかFAXでお申し込みください。

■1日目:見学会
 市民放射能測定センター・ちくりん舎は市民団体・個人の協同ラボとして昨年10月に設立され、ちょうど6月から測定の受付を開始しました。運営を中心的に行っている「福島老朽原発を考える会(フクロウの会)」は、福島第一原発事故後、フランスにおける市民放射能分析NGOのACROと協力して子どもの尿検査を行ってきました。NaIシンチレータ測定器による一般分析以外に、ACRO から寄贈されたゲルマニウム半導体測定器によって、0.3ベクレル/kg程度の高精度定量ができるそうです。当日は実際の測定の様子を見せていただきます。

 ちくりん舎がこの場所にできたのは、周辺にある廃棄物最終処分場やエコセメント工場による環境汚染を市民が自ら調査・監視する活動を80年代から行い、99年に発足した「たまあじさいの会」があったことが大きいようです。東京都の西半分三多摩地区の一般廃棄物焼却残渣が集まってくるのですから、福島原発事故後は放射能も濃縮されて来ています。多摩地区は宮城県女川のがれきも受け入れ、焼却しています。事実、空間線量率と土壌放射能を測定してみるとエコセメント工場周辺ほど高く、風の流れと関連しているそうです。処分場やエコセメント工場周辺をたまあじさいの会の方の案内で散策して、環境汚染の実態、その一端を見ます。

◆見学のスケジュール
・10時30分:
  JR青梅線・青梅駅改札集合、
  たまあじさいの会の方の車でちくりん舎(日の出町大久野7444)へ
・11時00分〜12時30分:
  市民放射能監視センター/ちくりん舎見学
・12時30分〜13時30分:
  昼食(※各自弁当持参)
・13時30分〜16時00分:
  たまあじさいの会の方の案内で廃棄物処分場の見学。
  ハイキングコースを歩く。※山道というほどではないが、運動靴で。
  車コースもありますので、希望者はお申し出ください。
・16時00分:
  JR 青梅線・青梅駅より立川駅経由八王子駅へ
  京王バスで野猿峠 八王子セミナーハウスへ

◆夕食・交流会
 高木学校のこれからについて

■2日目:グループ発表・個人発表
 高木学校には複数のグループがあり、それぞれが活動を行っています。市民講座の企画や出版物の執筆を行うにあたっても、各グループ・メンバーの日常の活動がそれらアウトプットを支えています。
 夏の学校では例年、グループ発表・個人発表の時間を設けてきました。今年は、さらにそこでの議論を実りあるものとするために、各発表を「発表‐質疑応答‐議論」の構成とし、必要な時間を確保できるよう事前にプログラムを作成しました。若干ではありますが発表枠に余裕をもうけましたので、発表のご希望があれば夏の学校参加希望とともにご一報ください。

■2日目:15時50分〜16時00分 第17回市民講座に向けての検討
 上記グループ発表における医療被ばく問題研究グループの内容をもとに講演と質疑で構成する方向です。高木学校として放射線の健康影響に関し実際のデータを収集整理して考察し、福島事故の影響を研究する必要を感じています。この時間では研究の方向性について検討しながら、市民講座での報告内容を考えます。市民の科学としては原発事故処理作業現場の状 況や社会情勢も踏まえていかなければなりません。
 ご一緒に研究や発表をされたい方がいらしゃいましたら、検討段階からふるってご参加ください。

◆プログラム
夏の学校2013プログラム
※グループ発表は、拡大運営会議で予算申請したグループによる発表を中心としています。
※※発表者が増えた場合には一枠の時間を短縮することがあります。

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ふだん着の仁さん66 原発事故はくりかえす

高木久仁子

 岩波新書『原発事故はなぜくりかえすのか』は高木仁三郎の死の2か月後、2000年12月に出版されました。1999年9月に起きた東海村ウラン加工施設JCO社で突発した臨界事故、半径10キロメートル内の住民が屋内退避する事態となり、その後大量被ばくした作業員2人が治療の甲斐無く亡くなったこの事故を昨日のことのように思いだされる方も多いと思います。政府の事故調査委員会は3か月後には早々と作業員の逸脱行為が原因とした報告書を出し、科学技術庁は文部科学省へと組織統合され幕引きが図られました。これでは事故再発は必至だと、亡くなる3か月前、仁さんはがんの痛みを押して口述テープを残しましたが、これが『原発事故はなぜくりかえすのか』です。

 福島原発事故から2年4か月余、チェルノブイリ事故とならび原子力事故国際評価尺度7という大事故を起こしたのはどこかよその国の原子炉かと錯覚するほど「我が国の」電力各社は再稼働へまっしぐらです。原発推進に邁進して来た勢力は過酷事故の現実から目をそむけ、原発政策の破綻にももろともせず、推進政策再検討の必要性すら認めようとしません。国の責任ある機関による事故責任の追及も行われる様子は一向にありません。放射能被害は原発の2、30キロ圏に留まることなく広範囲におよんでいます。多くの人々が避難を余儀なくされ、地域社会も文化も経済も歴史も根こそぎ破壊された事態を前に、原発をどうするか?は、もはや原発推進の政府の任ずる原子力専門家や、首長や議会に全面委任というわけにはいきません。広範な利害関係者、すなわち行政、企業、NPO、住民等々の直接・間接の利害関係者がステークホルダーとして対等の立場にたち議論し、検討する場が必要とされます。原子力のように被害が広範に及ぶものでは、ステークホルダーも広範に及びます。

 『原発事故はなぜくりかえすのか』で仁さんが強調した、議論なし、批判なし、思想なしの状況は、残念ながら、これまでにも輪をかけて増殖、拡大再生産されています。

 たとえ世間が放射能を忘れても、放射能の方では核種の半減期に従い減衰し、消えてしまうわけではありません。また、いくら原発に固執しようが、耐用年数を超えて施設を使い続けるわけにはいきません。1960年代後半から年に1基から数基ずつ建設されていった日本の原発は、現在、多くが高齢期に突入し、将来のエネルギーを担うどころか、廃炉の現実に次々と直面することになるのです。原発は動かせば日々新たに放射性廃棄物が溜まり増えていきます。放射性廃棄物という扱いのやっかいなゴミは世界中で頭痛の種です。核・原子力が産みだした膨大な猛毒の負の遺産をどうするか、人類の英知を集めなんとかしなければならないところに来ています。たとえ価値観や歴史認識の相違だと言い抜けても、たまり続ける放射性物質の存在を無視や逃避するわけにはいきません。大量生産、大量廃棄時代の負の遺産、最も厄介なゴミと立ち向かわねばならないそういう時代に私たちは至っているのですから。

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お便りを二通

池上ちづ子(北海道、通信購読会員)

[第1信]3月28日消印

 通信うけとりました。まっていたのでうれしかったです。夢中で読みました。
 日本の何倍何十倍の広さをもつオーストラリアには原発が一基もないのに、なぜこのせまい々々地震大国の日本に54基もあるのかと怒りがわいてきました。そして情なく悲しくなりました。本も送って下さりアリガトウ。一気によみました。

 宝くじ時々かっていますが当りません。だれに当ってるのでしょうか。
 日本はこれからどうなるのかと不安でたまりません。原発の問題、消費税の問題。


[第2信]6月5日消印

 前略

 高木学校通信第86号うけとりました。ありがとうございます。早速むさぼるように読みました。瀬川嘉之氏のお書きになった国会事故長委員からの報告を読み、国会が事故調委員をよんで直接報告をうけることはなかったとの記事を読みがくぜんとしました。一体日本の国会議員というのは何の為に自分たちが高給を税金からもらっているのか全く自覚も認識もできないバカ野郎ぞろいということがよくわかりました。一体国民の事をなんだと思ってるのでしょう。怒りを通りこしてむなしくなってきます。政府中枢には届いてない事故調委員会の報告、政権与党が崎山さん黒川清さんの参考人招致を拒否してるなんて、日本は絶対に先進国ではないと痛感させられました(本当に情ない国です、日本は)。なんで日本なんかに生まれたのか、国民をなめてかかりバカにしてる自民党政権に次回の選挙でお灸をすえてやらなければと、かたくちかいました。

 医療被曝手帳をめぐってをよみ、日本中の病院の整形外科医たちは皆同じ様なことをしてるなと痛感させられました。私も自転車で転倒し顔半分黒アザになり病院にいったところ同様の目に会わされました。CT漬け、レントゲン漬けにされました。体調よくありません。C型肝炎を治す方法なんでもいいから情報下さい。おねがいします。


ご諒解を得て、いただいたお便りを今号の「サポート丸航海日誌」としました。
☆サポート丸航海日誌への投稿を歓迎します!
この「サポート丸航海日誌」欄へ、会員からのお便り、ご意見など、ご投稿を受けつけます。
高木学校通信へ掲載のご投稿は、後日高木学校ウエッブサイトにて公開させていただきたいと思いますのでご了解ください。1200字以内で、高木学校事務局へEメールまたはファックスでお寄せ下さい。(編集担当)

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