<目次>
奥村晶子
<プログラム>
☆何故泰阜(やすおか)村は集団検診をやめたかDVD上映
−網野皓之医師へのインタビュ− (編集・秋山明胤)
☆その後の泰阜村訪問 − 松島貞治村長のお話 山田千絵
☆がん検診被ばくのリスク 崎山比早子
☆がん検診の有効性を検証する 瀬川嘉之
☆自治体におけるがん検診 練馬区の場合 池尻成二(練馬区議)
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1月30日、カタログハウスにおいて市民講座を開催いたしました。今回で13回を数える市民講座ですが、「インタビュー映像」や「泰阜村訪問報告」などを盛り込みました。今までの講座とは違った形で、この1年の高木学校の活動をご報告できたのではないでしょうか。また練馬区議
会議員の池尻成二氏をゲストにお招きし、「自治体におけるがん検診」と題してお話いただきまし
2 高木学校通信第66号た。前回講師をお願いした『がん検診の大罪』の著者、新潟大学教授岡田正彦氏にお越しいただき、会場からの発言・助言をお願いしました。参加者は51名で、様々な意見や質問をいただき、<医療><放射線>に関わる事柄の難しさを痛感し、心を新たにしております。ご参加ご協力して下さったみなさん、ありがとうございました。講座の様子を速報でお伝えします。詳細は報告集をお待ちください。(→第13回市民講座報告集はこちらから)
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☆何故泰阜村は集団検診をやめたか
『なぜ、村は集団検診をやめたか』この1冊の本が網野氏との出会いでした。「集団検診は無効」
と結論し、20年以上前から集団検診を中止した網野医師と泰阜村。その経緯を網野氏に詳しく伺
うことができました。秋山明胤さんが35分に編集した映像ですが、網野氏のお考えがお伝えでき
たかと思います。以下簡単にご紹介します。
●へき地医療を志し泰阜村に赴任、診療に携わる中で‘見落とし死亡例’ に遭遇します。集団検
診を受けているにもかかわらず進行性胃がんが見落とされていることが3年続けて起きている事
に気づき、検討を始めます。文献調査から83%の胃がんが見落とされていることを知り、また胃
がん死亡率低下に集団検診実施が寄与してはおらず、食生活改善などによる自然減であることに気
づきました。肺がん(メイヨークリニック)、大腸がん(ミネソタ大)と調べ、集団検診に有効性
はないと結論します。そして村議会の大反対と戦い集団検診を廃止しました。一方検査を望む人に
は集団検診のようなずさんなやり方でない適切な検査を施すこととし、また高齢社会のへき地医療
を訪問看護中心の福祉政策に大きく舵を切り、確実な医療を目指しました。その結果医療費の抑制
ができました。一般的に医療費は上昇していくもので、このことは過剰検査・過剰投薬など相当な
無駄があることを示唆しているのではないでしょうか。
●早期発見早期治療というマジックがあります。「リードタイムバイアス」:早期発見でも晩期発見でも病気の発生からの生存期間で考えると変わらないことがある。つまり病気発見後の生存期間だけで比べられない。「レングスバイアス」:同じ病気でも進行の早いタイプ、遅いタイプがあり、生存期間の長い進行の遅いタイプが発見されやすい。このようなバイアス(偏り)を意識して、早期発見早期治療について考えなくてはいけないのです。そして検診の有効性をいうには、検診を行った群と対照群を設定したRCT(無作為化比較試験)が不可欠です。さらに検診の社会的意味を問うには、総死亡率まで考えなくてはいけないといえます。つまり事故や自殺など全ての死因を含めての総死亡率が下がってこそ社会的意味があるわけで、RCTのなされていない検診は無意味といえます。
☆その後の泰阜村訪問−松島貞治村長のお話では、短い時間ながらも松島村長のお人柄や考えをお伝えしました。集団検診をやめ、在宅医療に重点をおく施策により医療費が抑えられているという結果が出ています。ひとつの可能性を示しています。
☆がん検診被ばくのリスクでは、なぜ医療被ばくを減らさなくてはいけないのか、放射線が発がんにつながる科学的根拠をなるべくわかりやすく解説することに努力しました。
☆がん検診の有効性を検証するでは、いまだ明らかな検証がなされていないがん検診の有効性に対して、独自の検証を行いました。検診有効性の根拠には疑問があり、検診受診率とがん死亡率変化には相関がみられないことがわかりました。(このあとこれらの調査を発表し世に問うていくための準備にかかります。)
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TOPページ > 高木学校通信 > 高木学校通信 第66号(2010年2月5日 発行)